バイオ個性で食べて、心と体をつなぎ、健康と幸せを手に入れるホリスティックな食事法をコーチングする、ソフィアウッズ・インスティテュート代表 公認統合食養ヘルスコーチ(CINHC)、公認国際ヘルスコーチ(CIHC)の森ちせです。
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目次
精神栄養学の論文の中に面白いもの発見
今年(2023年)4月に、カンタベリー大学から「精神栄養学」の修了証をいただきました。そのコースで推薦図書に挙げられていた数多くの面白い論文の中に、ソフィアウッズ・インスティテュートの読者の皆さんの中にもご関心ある人が多いだろうと思う論文がありました。
(なお、私が受講した精神栄養学のコースについては『精神栄養学で修了証』を、精神栄養学については『精神栄養学』をご参照ください)
その論文の文章の中では詳しく触れられていなかったものの、背景となった詳しい調査データが掲載されていましたので、興味半分にいくつかグラフにしてみたら、「へぇ~!」という、結果が見えてきました。
可視化、重要ですね(笑)
論文の骨子と共に、グラフから見えてきた発見についてお伝えします。
なお、この記事で引用した研究については、元の論文の索引をご確認ください。最後に元の論文を参考文献として掲載しています。
フルーツと野菜は心の状態を変える
フルーツと野菜には多くのビタミンだけでなく抗酸化物質も豊富に含まれています。生活習慣病、心疾患、神経変性疾患など、多くの病気の予防や改善にとって有効であることが示されてきました。また、豊富に含まれているミネラル成分は、神経伝達物質として正常な認知機能と精神状態にとって不可欠な栄養素です。
そして、ここ数年、「あなたは食べたものでできている」という言葉で知られるように、体だけでなく、心の状態にも食べたものが大きく影響していることを証明するデータが多く報告されるようになりました。
特に、フルーツと野菜が心の健康にとって重要であるという科学的な証拠が積み上がっています。
多くの研究が、フルーツと野菜を多く食べるほど、次の傾向が高いことを明らかにしています。
- うつやネガティブな気分に陥るなどの精神疾患の発生が低い
- 幸福感が高い
- 人生への満足感や社会的な成功や達成感が高い
この、フルーツと野菜を食べる量が多いほど、ポジティブな心の状態が強くなるという調査結果は、性別、収入、学歴、喫煙、BMIなどの要素を加味しても同じ結果が得られること、そして、長期間に渡る追跡調査と介入試験によって、この関係は、相関関係ではなく、因果関係である可能性が高いことが示されています。つまり、
何を食べるのかによって、心の状態が変わる
心が先か食事が先か
一方で、複数の研究によって、心がポジティブであるほど、より健康的な食品を選択する傾向が高いことが示されています。また、ストレスなどネガティブな心の状態は、より不健康な食品や暴飲暴食などの不健康な食事パターンを起こすことも示されています。
これは、統合食養学が、心の栄養を一番重要な栄養素だと考える理由のひとつです。まず、心を満たすこと、そのことによって、私達は不要なものを欲しなくなるからです。つまり
心の状態によって、何を食べるかの選択と行動が変わり
何を食べるのかによって、心の状態が変わる
と、考えるのです。
そして、この循環関係は、好循環にもなれば悪循環にもなります。
この、食事と心の関係において、食事を変えることを先にした方が良いのか、心を満たすことを先にした方が良いのか悩まれる人もいらっしゃるかもしれませんが、現実的には、どちらが先でもいいんです。だって、実際、どちらも満たす必要があるからです。
なお、ストレスがなぜ不健康な食品チョイスを起こしてしまうのか詳しい脳の仕組みについては、『クレイヴィング』(近日公開予定)をご参照ください。
フルーツと野菜なら何でも良いのか?
じゃぁ、フルーツと野菜だったら何でも良いのでしょうか。甘いシロップ漬けの缶詰のフルーツやジャムでもいいんでしょうか?
フルーツと野菜が心と体の健康に良いと発表している研究の中で、フルーツと野菜がどのような状態で食べられたのか、多くの場合不明です。
そのため、例えば、次の様な疑問が生じます。
- 生で食べる場合と調理(加熱)してから食べる場合で違いはあるのか
- 加熱した場合でも、蒸す、茹でる、焼くなどの調理法の違いで心の状態に変化はあるのか
- 加工の仕方によっても、例えば、缶詰か冷凍で違いはあるのか
等です。
ミクロ栄養素で考えると・・
加熱することで、失われてしまう栄養素もあれば、加熱することで取り出しやすくなる栄養素もあります。
例えば、水溶性の栄養素(ビタミンB群、ビタミンCなど)は、加熱によって、生物活性が失われやすいですし、多くの抗酸化物質は、その量と活性共に加熱によって失われてしまいます。
一方で、脂溶性の栄養素(ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKなど)は、加熱によって変化しにくく、また、リコピンの様に加熱によって活性する抗酸化物質もあります。
現在までに心の状態と大きく関係していることが判明している栄養素は、ビタミンC(水溶性)とカロテノイド(脂溶性)ですが、では、生のままビタミンCを多く摂った方が心に良いのか、加熱してカロテノイドを摂った方が心に良いのか・・・不明です。
ホールフードで考えると・・
加熱による影響は、フルーツと野菜の種類によっても異なります。
例えば、トマトの栄養素は加熱に強く、ブロッコリーの栄養素は加熱に弱いことが判っています。(ソフィアウッズ・インスティテュートのセルフドクターコースでは、お野菜の個性ごとの調理法についても教えています。)
加工方法では・・
缶詰のフルーツや野菜の栄養素は、加熱処理したフルーツや野菜と同様に生物活性が減少します。特に、保存期間が長くなればなるほど、栄養素の生物活性は失われます。
一方で、冷凍してもフルーツと野菜の栄養価にあまり変化は起きません。冷凍フルーツと冷凍野菜の栄養価は、食べ方によって変化することが判っています。例えば、冷凍のまま食べるのか、自然解凍して食べるのか、加熱解凍して食べるのか等によって大きく異なります。
そうした変化が心の状態とどの様に関係しているのか不明です。
これまでに判っている心への影響
フルーツと野菜の状態、例えば生か加熱かの違いによる、心への影響の違いを調べ報告されている研究は、現在までに3つしかありません。
その3つとも、生のフルーツと野菜の方が加熱したフルーツと野菜よりも総体的に心の状態と強い関係があることを示しています。
- フランスとアイルランドに住む10,602人の男性を対象とした研究|生のフルーツと野菜を食べる量が多いほど、うつ症状が起きにくいと有意に言えるが、調理済みのフルーツと野菜では言えない。
- イギリス全土に住む3,706人の学生を対象とした研究|男子学生ではサラダ/生野菜を食べる量とストレスとが負の相関関係にあった。女子学生では生と調理済みのフルーツと野菜全てでストレスと有意な負の相関関係にあった。
- 欧州の学生1,800人を対象とした研究|女子学生では、調理済みの野菜を食べる量と比較して、生野菜のサラダを食べる量はストレスとより強い負の相関関係があったが、うつの症状において違いは見られなかった。
男性は生で食べた方が良い?
3つの研究からは、男性と女性では心への影響が異なることが印象的です。
男性は野菜とフルーツを生で食べた方がより心に良い影響を受けやすくストレスに強くなり、女性は生でも加熱でもどちらでも野菜とフルーツがストレス耐性を作ってくれるようです。
野菜とフルーツは生の方が良い?
更に、介入研究がひとつあります。
被験者は次の3つのグループにランダムに分けられ2週間を過ごします。
- 生のフルーツと野菜(ニンジン、キウイフルーツ、オレンジ、リンゴ)の宅配を毎日受ける
- フルーツと野菜を食べる量を増やすように促すメッセージと商品券を毎日受け取る
- 今まで通りの食事を続ける(比較対象グループ)
1番目と2番目のグループは、フルーツと野菜を食べる量が有意に増えたと報告しましたが、ウェルビーイングが改善したと回答したのは、1番目のグループだけでした。
研究者は、フルーツと野菜をどのようにして食べたのかが結果に影響しているのではないかと述べています。生のフルーツと野菜の宅配を受けたグループは、生で食べることが多く、商品券を受け取ったグループは缶詰や調理済みの野菜などを購入することが多かったのではないかと推察し、そのことが、被験者のウェルビーイング(心の状態)の差となって表れたのではないかと考えています。
ただ、この研究では、各被験者がどの様にフルーツと野菜を食べたのかを調査していないため、研究者の推察に留まっています。
加工食品 vs 自然食品
今回の新しい研究では、ニュージーランドと米国の18歳から25歳の若者400名が対象となり、次の2つのグループに分け、心への影響の違いを比較しています。
- 生のフルーツと野菜
- 加工(調理、冷凍、缶詰、レトルト)したフルーツと野菜
被験者の年齢を18歳から25歳に限定している理由は、どの国においてもこの年齢層でフルーツと野菜の摂取量が最も少なく、同時に、精神疾患リスクが高い年齢層だからだと研究者は説明しています。
- 横軸が心の状態を表しています。「達成/成功」は人生の達成感ややりがいなどの感情を指します。「満足感」とは、人生への満足感を指します。
- 縦軸が相関指数です。「1」は高い正の相関、「-1」は高い負の相関、「0」は関係なし、を表しています。
分かりやすくするためにグラフを4分割しました。黄色のセクションにある食品は、心に良い影響を示しているものです。
ネガティブな心の状態への影響
ネガティブな気分やうつ症状や不安症状などの「ネガティブな心の状態」の予防や改善に、生のフルーツと野菜に効果があることが判ります。一方で、加工したフルーツと野菜には、まったく改善効果がないか、あっても僅かです。
そしてジャンクフードや炭酸飲料など「超加工食品」と呼ばれている食品群が、「ネガティな心の状態」の弾きがねとなったり悪化させる可能性があることが示されています。
ただ、フライドポテトに予防や改善効果があったことは、かなり驚きです(笑)
落ち込んだ時には、甘いお菓子を食べるよりも、生のフルーツや野菜(そして、フライドポテト?笑)を食べる方が効きそうです。
ポジティブな心の状態への影響
生でも加工でもフルーツと野菜には、ポジティブな気分や活躍/成功・満足感などの「ポジティブな心の状態」を作ったり高める効果があることが判ります。若干ですがチョコレートにもあるようです。(ダークチョコレートの詳しい機能については『ダークチョコレート』をご参照ください。)
そしてやはり、ジャンクフードなどの超加工食品が、私達の幸福感を奪っていく食品であることが判ります。(詳しくは『クレイヴィング』をご参照ください。)
野菜編|生 vs 加工の心への影響
生と加工の両方のデータがあった野菜をそれぞれグラフにしてみました。
ピーマンと緑の葉物野菜
ピーマンと緑色の葉物野菜は、生で食べても調理して食べても全体的な心の状態に良い影響をもっていることが判ります。
葉物野菜は、生で食べる方が「ポジティブな心の状態」への効果がより高くなりますが、ピーマンは調理してもそれほど効果が下がりません。
ピーマンの詳しい機能については『ピーマン』をご参照ください。
ニンジンとマッシュルーム
ニンジンは、生で食べる方が全体的な心の状態に圧倒的に良い影響をもっていることが判ります。一方で、調理などの加工をすると「ポジティブな心の状態」には若干寄与するものの、「ネガティブな心の状態」の予防や改善にはあまり効果はないようです。
マッシュルームも、生で食べる方が全体的な心の状態に良い影響をもっていることが判りますが、ニンジンと比較すると「ポジティブな心の状態」への効果は限定的です。また、調理したり缶詰など加工をしたものには、ほとんど心への影響がないことも分かります。
ビーツ
ビーツは、生で食べても調理や水煮などの加工をしてあるものを食べても同じように全体的な心の状態に良い影響をもっていることが判ります。
ただ、「ネガティブな心の状態」の予防・改善よりも「ポジティブな心の状態」への効果の方がより高いことが分かります。
ビーツの詳しい機能については『ビーツ』をご参照ください。
その他の野菜
これらの野菜は、生か加工かのいずれかのデータしかなかったものです。
加工されたネギ以外は、どの野菜も、生でも加工でも、程度に差はありますが、全体的な心の状態に良い影響をもっていることが判ります。
今まで個別に詳しい機能について執筆した記事は次をご参照ください。
フルーツ編|生 vs 加工の心への影響
生と加工の両方のデータがあったフルーツをそれぞれグラフにしてみました。
リンゴ
リンゴは、生と加工のどちらも全体的な心の状態に良い影響をもっています。
しかし、生で食べた方が効果がいっそう高いことが判ります。
リンゴの詳しい機能については『リンゴ』をご参照ください。
ベリー類と石果類
ベリー類と石果類は、生であっても加工であっても、「ポジティブな心の状態」に良い影響をもっていることが判ります。
一方で、「ネガティブな心の状態」には、ベリー類は生で食べた方がよいものの、冷凍や加工されたベリー類や石果類はどの状態でもあまり関係がないことが判ります。
今まで個別に詳しい機能について執筆した記事は次をご参照ください。
その他のフルーツ
フルーツはどれでも、生で食べれば全体的な心の状態に良い影響を持っていることが判ります。
特に、バナナとグレープフルーツが優秀なことと、ブドウがそれほどでもないことが、意外に感じました。
今まで個別に詳しい機能について執筆した記事は次をご参照ください。
フルーツと野菜はどれだけ食べたらいいの?
では、フルーツと野菜は毎日どれくらい食べると心の状態に良い影響をもたらすのでしょうか。
論文では、生のフルーツと野菜についてだけグラフが提供されていました。このグラフでは、1日に生のフルーツと野菜を6.5皿食べている時がポジティブな気分に最も影響力があることが示されています。
そして、6.5皿を超えるとポジティブ効果が下がって来るというのは面白いです。どんなに良いものにも「適量」があるということなんですねー。
6.5皿をどう考えたら良いか
1日に6.5皿の生の野菜とフルーツという情報は、かなり大量の野菜と果物を食べなければいけないというイメージをもった人が多いのではないかと思います。「無理!」と思った人もいらっしゃるかもしれませんね。
でも日本食の基本は、一汁三菜です。
三菜は、主菜一皿と副菜二皿ですから、副菜の二皿を野菜にしたら良いだけです。そう考えたら、少し心のハードルが下がりませんか?
毎食二皿、お野菜の副菜を食べたら、3食で6皿です。
そして、おやつにフルーツを食べたら、1日6.5皿のフルーツと野菜はクリアできます。
今までのプライベート・ヘルスコーチングを通して、日本では、フルーツを食べる習慣のある人が少ないという印象を思っています。そのため、ソフィアウッズ・インスティテュートでは、当初から何かしら毎日1つ、生のフルーツを食べることをお勧めしてきましたが、やはり理に適っていますね。
生で食べなければいけないのか
副菜二菜を全て毎食生野菜にするのは、少し心の抵抗感が私にはあります。
なぜなら、冒頭でお伝えした通り、加熱しなければ利用できない栄養素があるからです。心だけでなく体全体の健康を考えたら、加熱調理したお野菜も必要です。それに、今回ご覧になってきた通り、調理した野菜も生野菜と同じくらい心の状態に効果があります。
そのため、ヘルスコーチとしては次の様にして食べることをお勧めします。
- お野菜は、それぞれの個性に合わせて生と加熱の両方をバランスよく食べる
- フルーツは、できるだけ生で食べる
なお、1日にどれくらいの野菜と果物を食べると良いかについては、『野菜とフルーツのフラボノイド1日どれくらい食べたらいいの?』もご参照いただけると嬉しいです。
ソフィアウッズ・インスティテュートからのアドバイス
お野菜の個性に合わせた調理法や幸せ体質の作り方については、マインド・ボディ・メディシン講座セルフドクターで詳しく教えています。
あなたもソフィアウッズ・インスティテュートのマインド・ボディ・メディシン講座セルフドクターコースで学びませんか?
セルフドクターコースでは、あなたが食を通してご自身の主治医(セルフドクター)になるために、必要な知識とスキルを教えています。
新学期は、毎年3月と9月です。講座でお会いしましょう。
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公認ホリスティック・ヘルスコーチは、食事だけでなく、あなたを取り巻く様々なこと(環境、仕事、家族、人間関係など)を考慮して、プログラムに反映させ、あなたが、なりたいあなたになれるようコーチングを提供します。
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参考文献:
- “Intake of Raw Fruits and Vegetables Is Associated With Better Mental Health Than Intake of Processed Fruits and Vegetables”, Kate L. Brookie, Georgia I. Best, Tamlin S. Conner, Front Psychol, 2018; 9: 487, doi: 10.3389/fpsyg.2018.00487, PMCID: PMC5902672, PMID: 29692750
ソフィアウッズ・インスティテュート – ホリスティックヘルスコーチング